製造業に対する新型コロナウイルス感染症の影響は?

2021年1月、日本政府は新型コロナウイルス感染症関連で2回目となる「緊急事態宣言」を発令しました。1月8日からは埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、14日からは栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県が対象となっています(2021年1月15日現在)。この1年間、新型コロナウイルス感染症の拡大が始まってから、日本政府はさまざまな支援策を講じてきましたが、日本経済、特に製造業を取り巻く環境は、大きな変化のときを迎えているようです。

2021年1月、日本は多くの地域に対し、「緊急事態宣言」が発出されています。
不要不急な外出・移動の自粛、イベント開催に対する制限、飲食店や遊技場、大規模店舗などへの営業時間短縮および入場人数制限等を、国民に対して要請しています。
一方でこれらの要請に対し日本政府は、時短要請を行う場合に支払う「協力金」、雇用調整助成、労働者に対する休業支援などの対策を講じてきました。しかし、これらの支援だけでは間に合わず、「コロナ関連倒産」と呼ばれる倒産も実際には生じています。
2021年1月13日に株式会社東京商工リサーチ(東京都千代田区)が公表した2020年における「年間の全国企業倒産状況」によると、2020年の全国企業倒産(負債総額1,000万円以上)7,773件、このうち「新型コロナウイルス関連倒産」は、2020年1月から12月までの1年間で732件でした。
このうち、製造業は全体の1割強。製造業も幅広いためどの分野に影響が大きかったのかを推しはかることは難しいですが、倒産件数や負債総額が少ない割には、全国で大規模工場の閉鎖や、早期退職希望を募ることによる人員削減措置が取られるなど、製造業の在り方に大きな変化が起こっています。

では、製造業全体の動きを、景気の動きから見ていきます。
2021年1月14日、日本銀行(東京都中央区 以下、日銀)は、地域経済報告─ さくらレポート ─を公表しました。これによると、製造業のうち輸出・生産関連は、航空機関連など一部では低迷しているものの、自動車関連などの部品製造業、産業用ロボットや建設関係などで、持ち直す傾向が見られています。また、緊急事態宣言による「巣ごもり需要」の影響もあり、パソコン、タブレット、スマートフォンなどの需要拡大の影響からか、半導体分野での需要が拡大しています。
設備投資関連では、業績により明暗が分かれているようですが、地域別の生産(鉱工業生産)状況をみると、すべての地域で「景気が持ち直す傾向にある」と記されています。

さて、政府が国民に対して要請しているものは、もう一つあります。「テレワークを通じて出勤者数の7割削減」です。テレワークとはそもそも「情報通信機器等を活用して、時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働くことができる形態」のことです。「製造業では難しいのではないか」と思われるテレワーク。総務省が公表している「平成30年度 地域企業に学ぶ平成30年度 テレワーク実践事例集」などに掲載されている企業も、その多くはやはりオフィスワークが主体となる企業です。パソコンやネットワーク環境が充実していれば、テレワークが可能となるのが分かります。
やはり、工場で何かを製造するような勤務体系では、テレワークは難しいのではないか…、そう思われるかもしれません。しかし、場合よっては、工場勤務でもテレワークが可能になることもあります。

東京都江戸川区にある溶接工場では、2020年5月には、職人によるテレワークが始まっていました。
 小型の溶接キットを職人の自宅に設置
  作業が必要な材料は宅配便で送る
  職人の進捗は、クラウドベースの業務システムへ入力
 打合せはWeb会議システム
作業の見守りや指導は、溶接キットに取り付けたカメラを通じて、工場側と映像で繋ぐことができます。これらを整備することで、工場へ通勤しなくても仕事ができる環境をつくり上げています。

現代は情報通信機器等がさまざまな産業分野へ浸透し、全国民の7割以上がパソコンを所有している時代です。それならば、テレワークも夢ではない。オフィスワークに限らず、「ものづくり」の現場でも、工夫次第ではテレワークを可能にすることができます。
製造業の中でもたとえば、設計やお客様対応、事務作業ならば、毎日出社をしなくても業務の効率化を図ることはできます。また、前述のような「小型の機械」ならば、自宅での作業も可能になります。
切削加工やプレス加工、焼き入れなどのように大型機械を使用する場合は難しいかもしれませんが、卓上タイプの工作機械を使用する工程ならば、テレワークでの業務も可能な部分もあるでしょう。従業員の家に壁と屋根のあるガレージがあるなら、少し大きめの工作機械でも作業できるかもしれません。
業務の進捗は前述のようなクラウドベースの業務システムを利用し、定点カメラからの映像で手元を確認できるならば、技術指導や課題の発見・解決も可能になります。もちろん、それなりの設備投資は必要になりますが、IoTの応用など現在の情報通信技術を駆使すれば、不可能を可能にすることも夢ではありません。
製造業に限らず、日本は全国的に少子高齢化で、「働き手不足」という喫緊の課題があります。現在のコロナ禍だけではなく、ずっと先の未来も見据えた「製造業のテレワーク」に、挑戦してみてはいかがでしょうか。

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