平山の新入社員研修〜製造支援会社としての特徴と、新たに導入したメンター制度の成果とは

新入社員研修は、学生生活を終えたばかりの新入社員に対して、社会人としての心構えや仕事への向き合い方、実際に仕事をするための基礎的な知識やスキル、ノウハウを教える極めて重要な機会です。
株式会社平山は、「製造支援会社」として日本のモノづくりを支える人材を提供すべく、研修の仕組みづくりにもさまざまな工夫を凝らしています。平山の研修制度の特徴やコロナ禍の対応、2021年度から導入しているメンター制度の狙いや仕組み、メリット、今後に向けた課題などについて、同社管理部教育課の担当社員に聞きました。

インタビュアー

株式会社平山の新入社員研修の仕組み、具体的な流れについて教えてください。

当社の新入社員研修に当たる「内定者入社前研修」では、製造現場で働くうえで必須となる、安全の知識や5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)、作業手順書の重要性、要素作業訓練などについて、座学のみならず体験を伴う研修を通して学んでもらっています。

入社後は採用職種に別れて研修を行います。総合職を例にとると、当社の理念、歴史の理解に加えて、基礎的なビジネスマナー、それを実践するための土台となるビジネススキルやヒューマンスキル、同期や上司、先輩社員との相互理解を深めるためのカリキュラムを導入し、エンゲージメントの醸成や社内のリレーションシップの向上を図っています。SE職(FIS事業本部)の場合ですと、エンジニアとして仕事をするために必要な情報セキュリティ、ネットワーク、データベース基礎知識の習得のほか、ITパスポートやCCNA、JP-1等の資格取得支援を行っています。スキル習熟度を個別にカルテ化し、スキルレベルを常時把握できるカリキュラムや仕組みを構築しています。

インタビュアー

コロナ禍の影響を受けた2020年、21年は、新人社員研修をどのように実施されたのでしょうか。

内定者を対象とした入社前研修について、コロナ禍以前は1泊2日の日程で行なっておりましたが、衛生面への配慮および感染対策のために宿泊を回避し、1日での研修カリキュラムに変更いたしました。具体的な対策としては、少人数での開催(約20名から10名程度へ)、研修前後の検温、消毒用アルコールの常備(対象者1名につき1つ)、研修中のマスク着用、講師陣のPCR検査の定期実施、研修会場の定期的な換気などを実施しました。
特に力を入れたのは、コロナ禍でのリスクマネジメントを念頭に置きながら、限られた条件の中で、体験型研修の効果をいかにして再現するかという点です。入社後の早期戦力化に向けて意識・行動変容を実現できるよう、研修後のフィードバックをチームで共有しながら試行錯誤を繰り返しました。

インタビュアー

座学やOJTなどの研修手法をどのように使い分けられていらっしゃいますか。

座学とOJTの比率については、職場や部署によって異なるため一概にはいえませんが、目的に応じてOJTと座学、体験型研修、発信型ワークショップなどの学習方法を使い分けています。座学一つとっても「ソロフライトプラン」という社内研修講師が教えるカリキュラムのほか、PCやスマートフォンを使って、希望する知識をいつでも、どこでも、学ぶことのできる「eラーニング制度」を用意するなど、さまざまな工夫を行なっています。

インタビュアー

研修を通して、新入社員にはどのような知識やスキル、ノウハウを身につけてもらいたいと思っていらっしゃいますか。また、そのために工夫されている点があれば聞かせてください。

当社には「製造支援会社」として日本のモノづくりを支えるというビジョンがあります。そのため、新入社員の皆さんには、製造業の土台となる「PQCDMS(生産性向上・品質向上・コスト低減・納期短縮・モラル高揚・安全第一)」の知識、スキルを身に着けていただくことを念頭に置いております。ほとんどの方が初めて製造業に従事することになりますので、安全教育には特に注力。「安全道場」と銘打った体験型教育を導入し、設備の危険性を、身を以て体感する機会を提供しています。ルールや規則の中身やそれを守ることの大切さのみならず、「なぜ守らなくてはならないのか」など、ルールや規則の目的や根拠をしっかりと理解してもらうことを重視しています。

インタビュアー

2021年度から「メンター制度」を導入されていると伺いました。メンター制度を導入しようと思ったきっかけ、思いについて聞かせてください。

当社は2006年に「EAP(従業員支援プログラム)」を導入。カウンセラーを配置して、社員の皆さんのメンタルケアを定期的に行う「ココロケア・サポート」という取り組みを行っております。メンター制度を導入したのは、「ココロケア・サポート」のカウンセリングではカバーし切れない、日常的な業務での悩みなどを気軽に相談できるようにするため、そして、組織横断的な関係性を強化するためです。
従来の職場で自然発生する「タテの関係」、同期間だけで生まれる「ヨコの関係」に加えて、メンターという「ナナメの関係」を構築することで、より柔軟かつ発展的なリレーションシップが生まれることを期待しております。

インタビュアー

「メンター」の役割を務めるのは、どのような社員なのでしょうか。また、新入社員に対し、具体的には、どのような指導をされていらっしゃるのでしょうか。エピソードを交えながらご紹介いただけましたら幸いです。

メンターの役割を務めているのは30歳以下の若手社員です。所属部署ではなかなか聞けないこと、体験できないことを共有するために、できる限り新入社員の配属先以外の部署の社員に担当してもらうようにしています。新入社員の皆さんの視野をできるだけ短期間で広げられるよう、メンター役の社員には、対話や質問などコーチング手法も取り入れたメンタリングを行うよう指導しています。

2021年4月入社の新入社員からは「日頃からメールの添削を受け、文章を直してもらっている」「見守ってもらっているからこそ、ミスや失敗を恐れず、主体的に行動することができる」「客観的な意見をもらえるので、PDCAサイクルをスムーズに回ることができる」「プライベートな相談にも乗ってもらえる」といった感想をもらっています。

インタビュアー

配属先での研修やサポート、フォローアップの仕組みについて聞かせてください。

配属先では先輩社員によるビジネススキルやマナーを実践するためのOJTを中心に、メンターによる日常的なメンタリング、代表取締役社長や経営幹部が新入社員に直接研修を行う「社長塾」などを実施し、教育訓練やフォローを行っています。

インタビュアー

入社1年目でどれくらい成長してもらいたいと考えていらっしゃいますか。お考えをお聞かせください。

しっかりと実践経験を積み、成果を出すことも期待したいところですが、人材育成の観点からすると、1年目はキャリアの土台となる知識や技術の習得とともに、視野を広げる期間と捉えております。どんなスキルを身につけても、その土台となる思考力やヒューマンスキルといった“器”が成長していないと、2年目や3年目につまずいてしまうこともあります。まずは与えられた仕事や役割を全うする。その上で、仕事の結果を分析し、言語化しながら、内省を深めてもらうことが大切だと思っています。

インタビュアー

新入社員の育成を中長期的なスキルアップ、キャリア形成に結びつけていく上で課題があるとすれば何でしょうか。

社員の皆さん自身が目指しているキャリアビジョンと、実際に行っている業務や身に付けたスキル、現在抱えている課題をいかにリンクさせていくかということです。知識そのものはeラーニングなどにより、主体的に学ぶことができますが、高度な技術やスキルを独学で習得するのは容易ではありません。
また、通常の就労時間内のOJTだけでは、学習時間がなかなか確保できません。こうした課題を解決するためにも、会社として教育体制の強化や学習機会の確保に力を入れるとともに、社員の皆さんが自ら主体的に挑戦することができるよう、リアルタイムの情報共有や情報発信のためのツールや機会を豊富に提供していきたいと思っています。

インタビュアー

2022年度4月採用及び、今後入社する社員の教育への意気込みを聞かせてください。

コロナ禍の影響を受けて、採用活動においては非対面(オンライン)での説明会、面接がこれまで以上に定着していくと予想しています。非対面という状況の中で「価値観のミスマッチ」をいかにして防ぐか。これが目下の課題です。また、「VUCA」の時代と呼ばれ、私たちを取り巻く環境の変動性(Volatility)・不確実性(Uncertainty)・複雑性(Complexity)・曖昧性(Ambiguity)が高まっている今日、就職に対する考え方や将来のキャリアビジョンも大きく変わっていくことが予想されます。その意味で、目に見えない部分でのコミュニケーションの質の向上にも力を入れていく方針です。

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